日本で外国人が亡くなった時の埋葬
昭和の頃は日本国内で外国人の姿を見かける事は少なかった時代です。平成、令和と時を経て、コロナ禍も落ち着いた昨今の日本は外国人の観光客や留学生、日本で就労する人が増えました。
日本政府観光局の調査によると2024年の年間訪日外客数は36,869,900人で、前年比では47.1%増、2019年比では15.6%増と、過去最高であった2019年の31,882,049人を約500万人上回り、年間過去最高を更新しました。
日本に留学する外国人留学生は年々増加しており、2024年には33万人を超え、過去最多となりました。主な留学の目的は「日本で就職すること」「日本語を学ぶこと」「日本文化や教育レベルの高さに魅力を感じていること」などが挙げられ、特にアジア諸国、中でもネパール、中国、ベトナムからの留学生の増加が顕著です。
1月31日厚生労働省の発表によると日本における外国人労働者数は2024年10月末日時点で230万2587人過去最高(注)を更新しました。前年より25万3912人増加し、増加率は12.4%前年と同水準でした。
外国人労働者数を国籍別にみると、ベトナムが最多の57万708人(前年比10.1%増)で、全体の4分の1近くを占め(添付資料表参照)次いで、中国が40万8,805人(2.7%増)、フィリピンが24万5,565人(8.3%増)となりました。
(注)外国人雇用状況の届け出が義務化された2007年以降。
就労先の都道府県は、東京都の58万5,791人を筆頭に、愛知県22万9,627人、大阪府17万4,699人となっています。
このように多くの外国人が様々な国から来日し様々な目的で日本に滞在しています。
その中で残念なことに日本で亡くなられる方がいます。そういった外国人を火葬・埋葬するのはどうしたらいいでしょうか?
日本で外国人が亡くなった場合、火葬・土葬・墓地の取り扱いには法律・宗教・行政手続き・文化的配慮の複数の要素が絡みます。
1.法律・行政の基本ルール
① 火葬・埋葬に関する法律
•日本では墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)により、基本的には火葬が標準。
•土葬は市町村長の許可が必要であり、許可を出す自治体は少ない。
•土葬を希望する場合、受け入れ可能な墓地や自治体を探す必要がある。
② 死亡届・火葬許可
•外国籍の方が亡くなった場合も、死亡届・火葬(埋葬)許可申請は日本人と同様。
•死亡診断書・死体検案書を添えて市区町村役場に届け出る。
③ 大使館・領事館への届出
・在日大使館や領事館への連絡が必要な場合が多い。
・死亡証明書の翻訳
・本国への通知
・遺体搬送や本国葬儀手続きのサポート
2.火葬・土葬の実情
① 火葬
•日本ではほぼ全ての自治体で火葬可能。
•イスラム教・ユダヤ教・キリスト教の一部では火葬を忌避する宗派もあるため、事前の説明や同意が必要。
② 土葬
•現在、日本国内で土葬を認める自治体は極めて限定的。
(例:山梨県、長野県、三重県など一部地域)
•条件
衛生基準に適合した墓地
市町村の許可を得る
・現場
イスラム教徒向け墓地などが限られた地域に存在する。
3. 宗教・文化別の対応ポイント
| 宗教・文化 | 希望されやすい葬法 | 日本での対応策 |
| イスラム教 | 土葬が原則。火葬は原則禁止。埋葬は死後24時間以内が理想。 | – イスラム墓地を探す– 間に合わない場合、宗教指導者と相談し火葬で合意を得る場合もある |
| キリスト教(カトリック・プロテスタント) | 土葬または火葬。最近は火葬容認が増えている。 | – 火葬+納骨堂・墓地利用が一般的 |
| ユダヤ教 | 土葬が原則。火葬は原則禁止。 | – 日本では埋葬可能地がほぼないため、国外搬送を検討 |
| 仏教・無宗教(多くの東南アジア出身者) | 火葬が一般的 | – 日本の火葬制度で問題なし |
| ヒンドゥー教 | 火葬が原則。遺灰は川へ散骨することが多い。 | – 火葬後、遺灰を本国へ持ち帰るか散骨手配を支援 |
4.国外搬送(エアカーゴ)の選択肢
土葬を希望して日本国内での埋葬が困難な場合は、本国への搬送が行われます。
•必要書類
・死亡診断書・死亡届受理証明
・火葬(または埋葬)許可証
・領事館発行の輸送許可
・防腐処置・エンバーミングが必要な場合が多い
・航空便の手配は専門業者(国際搬送サービス)を利用
5.法律と宗教における24時間問題
日本の法律では死後24時間経過しないと埋葬はできず、イスラム教の教えでは死後24時間以内に埋葬が本来です。
日本でイスラム教徒の葬送を行う際に最も大きな課題のひとつです。
結論から言うと、「法律の制約を踏まえて宗教指導者や家族と調整する」ことが基本になります。
1.日本法とイスラム教義のギャップ
| 項目 | 日本の法律 | イスラム教義 |
| 火葬・埋葬開始の時間 | 死亡後 24時間以内の火葬・埋葬は禁止(墓埋法第3条)※誤認死亡による埋葬防止が目的 | 死亡後 できる限り24時間以内の土葬が理想 |
| 葬送方法 | 火葬が原則、土葬は許可制 |
2. 実際の現場での対処方法
① 宗教指導者との協議
•モスクのイマーム(宗教指導者)と相談し、法律上24時間以内の埋葬ができないことを説明する。
•宗教的には「できる限り速やかに埋葬すること」が目的なので、48時間以内であれば許容する例も多い。
•実務上、翌日の午前中に埋葬というケースが一般的。
② 特例としての迅速手配
•死亡届の提出 → 火葬(または埋葬)許可の発行 → 施設予約
を最短で済ませるよう、役所や火葬場に緊急対応を相談する。
•役所や火葬場によっては、事情を理解し最短スケジュールで手配してくれることもある。
③ 土葬の場合
•土葬対応墓地がある場合は、翌日に埋葬を行う段取りを組む。
•どうしても国内での土葬が難しい場合、本国への遺体搬送(国際搬送)を検討する。
④ 火葬を受け入れる場合
•本国や宗教指導者から許可が出れば、火葬を行い遺灰を埋葬する方法を採る。
•この場合も、洗浄・祈祷・白布での包みなど、可能な限り宗教儀礼を踏まえた対応を行う。
6.エンバーミングとは?
エンバーミングとは、遺体の腐敗を防ぎ、衛生的に保全するための技術で、「遺体衛生保全」とも訳されます。
国外搬送する際に有効な処置です。
また、エンバーミング(遺体衛生保全処置)は、死亡から24時間以内でも可能です。
火葬や埋葬と違って、墓地埋葬法の「24時間ルール」の制約を受けないためです。
1. 法律上の扱い
•墓地埋葬法で規定されているのは
「死亡から24時間以内の火葬・埋葬を禁止」
という内容のみです。
•エンバーミングはあくまで「衛生・保存・防腐処置」であり、火葬・埋葬行為には該当しません。
•そのため、死亡確認後すぐに処置を開始することが可能です。
2. エンバーミングが有効なケース
① イスラム教徒などで迅速な埋葬ができない場合
•法律上24時間は待機しなければならない間、遺体の腐敗防止ができる。
•衛生的な保全が可能で、遺族の立ち会いや宗教儀式も安心して行える。
② 国外搬送(エアカーゴ)
•多くの国では航空搬送時にエンバーミングを必須としているため、早期処置が望ましい。
③ 遺族到着待ち
•遠方から家族が到着するまでの数日間、遺体を清潔に保つため。
3. 宗教・文化への配慮
•イスラム教の場合
一部の宗派では体への処置に抵抗がある場合もあるため、イマーム(宗教指導者)に相談し同意を得るのが望ましい。
最近は「衛生上必要な最小限の処置」として受け入れられることも増えています。
•キリスト教・ヒンドゥー教・仏教
一般的に問題は少なく、衛生的配慮として歓迎される場合が多いです。
このように外国人が日本で亡くなった場合には、法律、宗教の教義など様々な事を配慮、考慮しないとなりません。