相続税はもはや特別な人・家の話ではない
国税庁から『令和6年分 相続税の申告事績の概要』が発表されました。
〜最新データから見える、これからの相続の現実〜
大切な方を見送った後、必ず向き合うことになる「相続」。
これまでは「一部の資産家の問題」と思われがちでしたが、今は状況が大きく変わっています。そして申告をせずにいることはできません。また申告して終わりでもありません。
最新の国税庁の発表から見えてきた、相続の現実を分かりやすくお伝えします。
■ 相続は“誰にでも関係する時代”へ
•被相続人:約160万人
(過去最多水準)
•申告件数:約16.6万人(増加)
・課税割合: 1割超え(10.4%)
・約10人に1人が相続税対象
•課税価格・税額ともに過去最高
現在、日本では亡くなる方の数が増え続けています。
それに伴い、相続そのものの件数も増加しています。
さらに、税制改正の影響もあり、約10人に1人が相続税の対象となっています。
つまり「うちは関係ない」と思っていたご家庭でも、相続について考える必要がある時代になっています。
■ なぜ相続が増えているのか
主な理由は次の3つです。
① 高齢化による死亡者数の増加
団塊世代が高齢期に入り、相続の発生件数が増えています。
② 相続税の対象者が拡大
2015年の税制改正による基礎控除の縮小
(旧)5,000万円+1,000万円×法定相続人
↓
(現)3,000万円+600万円×法定相続人
基礎控除が引き下げられたことで、
これまで非課税で対象外だった一般家庭も課税対象になりました。
その結果「うちは関係ないと思っていた」という人が増加しています。
③ 財産の増加
不動産価格の上昇や預貯金の蓄積により、
相続財産の総額が増えています。
都市部中心の不動産価格の上昇
•地価上昇(都市圏・人気エリア)
•自宅だけで課税ライン超え
■ 財産の中身の変化
これまでの相続は「土地や家」が中心でしたが、現在は変化しています。
▶ 現在の主な特徴
•預貯金などの金融資産が増加
•株式や投資信託なども一般化
•不動産の割合は相対的に低下
その背景には
•不動産の分けにくさ
•高齢者の貯蓄増加
•投資の普及
•生前の資産整理(現金化)
といった流れがあります。
■ 1件あたりの税額は“ほぼ横ばい”
•平均税額:約1,900万円前後
•大きな伸びはなし
理由3つ:
① “中間層”中心
課税件数が増えた最大理由は「新しく課税対象になった人」が増えたこと
しかしその層は
•大富豪ではない
•“ちょっと基準を超えた人”
つまり
税額が比較的小さい
② 小規模宅地等の特例などで税額が抑えられる
代表的なのが
小規模宅地等の特例
•自宅の土地 → 最大80%減額
•事業用地 → 最大80%減額
これにより
「資産は大きいのに税額は小さい」
③ 資産は増えても“分散”している
昔:•土地中心
(評価が大きくなりやすい)
今:•預貯金
•有価証券
•生命保険
などに分散
結果
•1つ1つはそこまで大きくない
•しかし合計で課税ライン超え
■ 財産構成の変化
•現金・預金:約35%
•土地:約30%
•有価証券:約18%
流れ
•土地中心 → 金融資産中心へシフト
結果
・“現金系資産”が課税ラインを押し上げ
•分けやすい=逆に揉める
•「均等に分ける問題」が増加
① “完全な平等”を求めやすい
・現金は1円単位で分けられる
•介護していた人 →「多くもらいたい」
関わりが薄い人 →「法律通り平等に」
少しの差でも強い不満になる
② 生前の動きが見えにくい
•同居していた子が預金の引き出し
・送金
•使い込み(と疑われる行為)
記録がないことで他の相続人から「勝手に使ったのでは?」と疑われる
③ 感情の対立が表面化しやすい
•過去の不満
•親への関わり方の差
・兄弟間の関係性
問題は「公平感」と「感情」
■ e-Taxが急増(構造変化)
•利用率:約50%(前年より+13ポイント)
意味すること
•税理士主導 → デジタル化・効率化
•将来的に手続きのスピード化
■ 税務調査は“強化傾向”
•調査件数・追徴税額ともに増加
•海外資産の指摘も増加
•「申告すれば終わり」ではない
■ 実は“税額”よりも大切な問題
相続というと「税金」が注目されがちですが、実際には税額の大小に関係なく、トラブルが起きることが多いのが現実です。
よくあるケース
•預金の管理を誰がしていたか分からない
•生前の預金引き出しをめぐる疑念
•「公平に分けたい」という思いのすれ違い
•不動産をどう扱うかでの意見対立
■ 葬儀後に必要になる“もう一つのケア”
ご葬儀が終わった後、ご遺族には次のような手続きが待っています。
•相続人の確認
•財産の調査
•銀行口座の手続き
•不動産の名義変更
•相続税の申告(必要な場合)
これらは精神的にも負担が大きく、
「何から手をつければいいのか分からない」という声が多く聞かれます。
■ まとめ
これからの相続は
「特別な人の問題」から「すべての人の問題」へ変わっています。
そして重要なのは
•早めに相続の知識を得ること
•家族で話しておくこと
•困ったときに相談できる場所を持つこと
困った時は専門家に早めに相談しましょう。