家族のいない私は死んだら誰が火葬してくれるの?死後事務委任契約とは?
パートナーも子供もいない一人暮らしの自分が死んだらその後のことは誰がやってくれるのかと不安になる人が増えてきました。
■ ひとり暮らしの高齢者・高齢者夫婦の世帯数の推移
2019年国民生活基礎調査によると、65歳以上の者のいる世帯数は2558万4千世帯であり、全世帯総数の49.4%を占めています。1986年では65歳以上の者のいる世帯数の割合は3割弱ですが、年々増加しており、2019年では全世帯数の約半分となっている状況です。
65歳以上の者のいる世帯を世帯構造別にみると、1986年には「三世代で暮らす世帯」が4割を超えていたのに対し、2019年では「三世代世帯」は1割を切り、「単独世帯(ひとり暮らしの世帯)」と「夫婦世帯」が全世帯の6割を占めています。
さらに、「65歳以上のひとり暮らしの世帯」は高齢者世帯(※1)の49.5%を占め、「どちらも65歳以上の夫婦のみの世帯」は高齢者世帯の46.6%を占め、高齢のみが生活する世帯が増え続けている状況です。
65歳以上のひとり暮らしの高齢者の男女の割合は、女性の方が多く、7割近くを占めています。年齢層別にみると、男性は65歳~74歳の前期高齢者が約6割を占め、女性では75歳以上の後期高齢者が約6割を占めています。女性では85歳以上のひとり暮らし世帯も2割程度みられます。
※1 高齢者世帯:
65歳以上の者のみ、もしくは65歳以上の者と18歳未満の未婚のものがいる世帯のこと2)。
一人暮らしの高齢者が増えている現代において、自分の死後の手続きに不安を感じる人も当然ながら増えています。
その不安を解消する手段の一つに死後事務委任契約があります。
ここでは死後事務委任契約について詳しくみていきましょう。
■ 死後事務委任契約とは
本人の死後に発生する各種事務手続きを、生前に信頼できる人(または法人)に委任する契約のことです。
これは民法上の委任契約の一種であり、「遺言」ではカバーしきれない死後の細かい事務を包括的に委任できます。
■ 死後事務で委任できる主な内容
| 分野 | 具体的な内容 |
| 葬儀・埋葬関連 | 葬儀の手配、火葬、納骨、埋葬、永代供養の手続きなど |
| 行政手続き | 役所への死亡届提出、健康保険・年金の喪失手続き |
| 医療・介護 | 病院や介護施設への支払い・退所手続き・荷物整理 |
| 住居整理 | 自宅の片付け、賃貸物件の解約、公共料金の停止 |
| 金銭関係 | 遺品整理業者・清掃費用の支払い、契約終了処理 |
| ペット関連 | ペットの引き取り・譲渡・世話を依頼することも可 |
※遺言では「財産の分け方」が主ですが、死後事務委任契約は「死後の現実的な作業」を委任します。
■ 契約の締結方法
1. 契約当事者
•委任者:亡くなる本人
•受任者:事務を行う人(信頼できる個人や法人)
2. 契約書の形式
•公正証書にするのが一般的(トラブル回避のため)
•私文書でも可能だが、実務では公正証書のほうが信用性が高い
3. 添付することが多い書類
•委任事項の詳細リスト
•葬儀内容の希望書(例:「火葬のみで」など)
•銀行口座・契約関係の一覧
•葬儀費用や清算資金を管理する信託契約と併用することも多い
■ 注意点
•死後の契約は本人の死亡によって効力が発生します
•相続人がいない(または頼れない)人にとって重要
•委任する相手に実行能力(実務遂行や費用支払い)があることが前提
•報酬の支払い方法(死後の口座から)や予算を事前に明記しておく必要があります
■ 死後事務委任契約が有効なケース(例)
•子どもがいない、もしくは縁遠い
•相続人がいない(あるいは相続放棄の可能性あり)
•家族に負担をかけたくないと考える人
•自分の望む葬送方法を確実に実行してほしい人
•ペットの行き先も決めておきたい人 など
■ よくある併用契約
•公正証書遺言:財産の処分に関すること
•任意後見契約:生前の判断能力低下に備える
•見守り契約・生活支援契約:生前の生活支援
•死後事務委任契約:死後の事務的処理
これらを組み合わせることで、老後〜死後の安心サポート体制を整えることが可能です。
一人で手続きするのは荷が重いと感じる方も多いです。サポートしてくれる団体・組織もあります。一人で悩まずに相談してみましょう。
■ 死後事務委任契約の公正証書の作成方法
■ 1.まずは公証役場に「事前相談」
✅ どこに相談するか
全国のどの公証役場でも作成できます。
まずは委任者の住所地近くの公証役場に電話かメールで連絡を取りましょう。
✅ 相談時に伝えること
•「死後事務委任契約の公正証書を作成したい」
•委任したい具体的な内容(葬儀、遺品整理など)
•委任者・受任者の情報(氏名・生年月日・住所)
•契約の目的(家族がいない、身寄りがない、など)
※相談は無料です。丁寧に教えてくれます。
■ 2.必要書類を準備する
| 書類 | 内容 |
| 委任者・受任者の本人確認書類 | 運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど |
| 印鑑証明書 | 委任者・受任者ともに(3か月以内) |
| 住民票 | 委任者(本籍入り推奨) |
| 契約内容の草案 | どんな事務を委任したいか、あらかじめ文章化しておくとスムーズ |
| 財産・契約関係の情報 | 葬儀方法、費用の支払い方法、信託契約との連携がある場合はその内容も |
■ 3.文案のすり合わせ(公証人と調整)
•公証人が文案を確認し、法的に問題がないよう修正・提案してくれます
•葬儀や供養、遺品整理などの希望はなるべく具体的に伝えましょう
■ 4.日程調整・公証役場での正式作成
•内容が固まったら、公証役場での面談日を決定します
•委任者・受任者が一緒に出向くのが原則(やむを得ない場合は委任状で対応)
■ 5.署名・押印・読み上げ(正式作成)
•公証人が契約書の内容を全文読み上げます(法律上の手続)
•委任者・受任者が内容を確認し、署名・押印
•公正証書原本は公証役場に保管、正本・謄本が手元に渡されます
■ 6.費用の目安
| 項目 | 金額の目安(税抜) |
| 基本手数料 | 約1〜2万円(契約内容の文量に応じて変動) |
| 正本・謄本の写し | 1通 250円~1,000円前後 |
| 登録免許税 | 不要(死後事務契約は不動産登記が不要) |
| 出張作成の場合 | 出張費・日当など別途(※自宅や病院でも可) |
※相続・信託・遺言との併用契約があると追加費用あり。
※この他、サポートを依頼した団体・組織の手数料が発生します。
■ よくある質問
Q1. 家族がいなくても契約できますか?
→ はい。親族がいない方こそ重要です。受任者に信頼できる個人や法人を選びましょう。
Q2. 葬儀費用はどう払えば?
→ 死後に受任者が故人の口座から費用を引き出すのは難しいため、事前に信託・預託・専用口座等を準備しておくのが一般的です。
Q3. 内容を変更したいときは?
→ 委任者が生きている間は自由に変更・撤回できます。変更時は公正証書の再作成が必要です。
一人で悩まずに、まずはサポートしてくれる組織に相談してみましょう。