故人様をお送りした後に信頼できるパートナーを目指して

親亡きあとの障害者の未来

2026/01/02

厚労省は2024年531日、在宅障害者・児の状況を調べる「令和4年生活のしづらさなどに関する調査」の結果を公表しました。平成28年以来の調査で、14,079人から有効回答を得て、同調査の結果を反映させた障害者の総数は、推計1164.6 万人。日本の総人口の約9.3%に相当します。

 在宅の身体障害者手帳所持者は推計で415.9万人となり、前回調査から減少している一方で、療育手帳所持者は推計114.0万人、精神障害者保健福祉手帳所持者は同120.3万人となり、いずれも前回からの増加が見られます。身体障害者手帳所持者が減少している理由について、厚労省の担当者は、わが国の人口減の影響が考えられると述べました。

 今回の調査結果を反映させると、わが国の障害者の総数は1164.6 万人、障害別に見ると、身体障害者が423.0万人、知的障害者が126.8万人、精神障害者が614.8万人。

 所在の内訳としては、在宅が95.8%、施設入所が4.2%、精神障害者のうち「入院精神障害者」は4.7%(28.8万人)。

 年齢の内訳は、65歳未満53%、65歳以上47%、身体障害者(児)のうち73%が65歳以上となっています。

 このデータから見えることは、障害者の子供を持った親が、自分が亡くなった後の子供の事が心配だということです。

 自分が死んだ後、障害のある子供が人として守られていくのか、今まで通りに暮らしていけるのか、お金の管理は誰がするのか、そういった不安や悩みを抱えています。

① 生活そのものが成り立つのかという不安

•食事・入浴・服薬・金銭管理ができない

•一人暮らしが不可能

•環境が変わるとパニックや体調悪化を起こす

親は「自分がいなくなった瞬間から生活が破綻するのではないか」と感じています。

② 「世話をする人」がいなくなる不安

•配偶者が先に亡くなる、または高齢

•兄弟姉妹に負担をかけられない、頼めない

•親戚とは疎遠

「きょうだいがいるが、人生を縛る存在にはしたくない」という葛藤が一番多い悩みです。

③ 経済面の不安

•自分の年金や収入が途切れたらどうなるか

•障害年金・生活保護で本当に足りるのか

•お金を渡しても本人が管理できない

•悪意のある人に騙されないか

「お金は残せても、使い方を守れない」という不安が想像以上に強く大きいです。

④ 住む場所の不安

•今の家に住み続けられるのか

•グループホームに入れるのか

•施設が見つからないのではないか

•施設の質が心配

「急に施設に入れられて、環境が激変し本人が混乱すること」が親にとって大きな不安です。

⑤ 人間として尊重されるかという不安

•乱暴に扱われないか

•話を聞いてもらえるのか

•存在を軽く見られないか

•「かわいそうな人」として処理されないか

非常に切実ですが、言葉にされにくい不安です。親は「この子の代わりに怒ってくれる人、守ってくれる人がいなくなる」ことを恐れています。

●親が特に恐れていること、心の奥で思っていることは

•親が急死 → 準備不足

•きょうだいが困惑

•行政手続きが進まない

•とりあえず施設 → 本人が混乱・拒否

•結果的に孤立

「自分の死が、子どもの人生を壊す引き金になるのでは」という恐怖です。

●親が本当は望んでいることは、必ずしも「完璧な将来」ではなく、多くの場合、

•生きていける

•安心して眠れる

•怒鳴られない

•見捨てられない

•誰かが気にかけてくれる

「普通でなくていい。孤独でなければいい」これが親の本音です。

●実は終活は障害のある子を持つ親にとって、すべて「この子をどう守るか」という事

•終活

•葬儀

•遺言

•エンディングノート

そして、障害者の子供を持つ親の終活は早すぎることはありません。

親はよくこう言います。「まだ元気だから…」しかし実際には、元気なうちでないと準備できない分野です。

●親亡きあとの対策

① 親が生前に準備できること

親亡きあと対策は、必ず次の5分野で考えます。

1. 人(誰が関わるか)

2. 生活(どこでどう暮らすか)

3. お金(どう残し、どう管理されるか)

4. 手続き(誰が判断・契約するか)

5. 想い(本人理解・きょうだい理解)

このどれかが欠けると、親の死後に混乱します。

② 具体的に「親が事前にできる準備」

1. 【人の準備】支援者を“見える化”する

•相談支援専門員をつける(※最重要)

•医師・ケアマネ・施設職員と顔の見える関係を作る

•きょうだい以外の第三者支援を意識的に増やす

2. 【生活の準備】住まいと暮らしを“試す”

•グループホーム・短期入所(ショートステイ)を利用

•施設見学・体験入居を生前から行う

•親と離れて過ごす経験を少しずつ積ませる

よくある誤解

「かわいそうだから親と一緒に」

しかし、親亡きあとに一気に環境が変わる方がはるかに過酷です。

3. 【お金の準備】残すより「守る」

•障害年金・特別障害者手当の確認

•親の死後の収支シミュレーション

•金銭管理方法の検討(後見・信託)

「いくら残すか」より「誰がどう管理するか」がポイント

相続トラブルより“生活破綻”が怖い

4. 【手続きの準備】判断できない場面への備え

•任意後見契約の検討

•親が元気なうちに意向を文書化

•行政窓口・制度の整理メモ作成

5. 【想いの準備】言葉に残す

•「この子のこと」専用ノート作成

•得意・不得意・パニック時の対応

•本人が落ち着く人・場所・習慣

制度より、この情報が現場では一番役立つことも多いです。

③ 公的支援

1. 相談支援体制

•計画相談支援

•地域生活支援拠点

•市区町村障害福祉課

親亡きあとの「司令塔」になる存在

2. 金銭的支援

•障害基礎年金

•特別障害者手当

•生活保護(親死亡後に検討されることも)

3. 住まい・生活支援

•グループホーム

•入所施設

•居宅介護・重度訪問介護

•日中活動(就労継続支援など)

4. 法的支援

•成年後見制度(法定・任意)

•市民後見人制度

④ 私的支援(公的制度の“隙間”を埋める)

1. 福祉型信託・家族信託

•生活費の目的限定管理

•第三者チェックが可能

※ 法律専門職と連携必須

2. NPO・親の会

•同じ立場の親同士の情報

•実体験ベースの助言

3. 民間後見・見守りサービス

•金銭管理

•定期訪問

•緊急連絡体制

 いわゆる「終活」は葬儀の準備のイメージが強く、その大半は“亡くなった後”のことですが、障害者の子供を持つ親の終活は“生きている人の未来”の準備です。

 具体的な契約などは信頼できる専門家へお願いしましょう。

 一人で全部やらなくていい、元気な今だからこそ、選べる選択肢があります。

 “もしもの時”に慌てないための準備を早いうちからしましょう。

●親亡きあとに備えるためのチェックリスト

  障害のあるお子さまを持つ親御さんへ 

このチェックリストは

「今すぐ全部やらなければならないもの」ではありません。

できている所・これから考えたい所を確認するためのものです。

① 人の支援(誰が関わってくれるか)

□ 相談支援専門員がいる

□ 市区町村の障害福祉課とつながっている

□ 主治医・医療機関が決まっている

□ 緊急時に連絡できる人が複数いる

□ 親以外で、子どものことをよく知る大人がいる

▶ ポイント

親が亡くなった後、最初に動いてくれる「司令塔」が必要です。

相談支援専門員は特に重要です。

② 生活・住まいの準備(どこでどう暮らすか)

□ 今後の住まいの候補を考えている

(例:自宅・グループホーム・施設 など)

□ グループホームや施設を見学したことがある

□ ショートステイ(短期入所)を利用したことがある

□ 親と離れて過ごす経験が少しずつできている

▶ ポイント

突然の環境変化は、本人に大きな負担になります。

「慣れる時間」を親が元気なうちから子供に作ってあげることが大切です。

③ お金の準備(残す・守る・使える)

□ 障害年金を受給している/確認している

□ 特別障害者手当などの制度を確認している

□ 親が亡くなった後の収支を考えたことがある

□ お金の管理を誰がするか考えている

(後見人・信託など)

▶ ポイント

「いくら残すか」より

「誰が、どう管理するか」が重要です。

④ 手続き・判断の準備(代わりに決める人)

□ 成年後見制度について聞いたことがある

□ 任意後見という選択肢を知っている

□ 契約や手続きを本人ができない場合の対応を考えている

□ 親の考え・希望を文書に残し始めている

▶ ポイント

親が元気なうちでないと、決められないことがあります。

⑤ 「この子のこと」を伝える準備

□ 本人の性格・得意不得意を書き出している

□ パニック時の対応方法が整理されている

□ 好きなこと・嫌いなことが分かる

□ 落ち着く場所・人・習慣が分かる

□ 医療・服薬・アレルギー情報がまとまっている

▶ ポイント

この情報は、制度以上に本人を守る力になります。

⑥ きょうだい・家族との共有

□ きょうだいに現状を伝えている

□ すべてを任せるつもりはないと伝えている

□ 家族で将来について話したことがある

▶ ポイント

「頼る」と「背負わせる」は違います。

役割を決めることが大切です。

⑦ 最後に

□ 「まだ元気だから」と後回しにしていない

□ 一人で抱え込まなくていいと知っている

□ 専門家に相談してもいいと思えている

親御さんへ

完璧でなくて大丈夫です。

一つずつで構いません。

「この子が一人にならない」

そのための準備を、できるところから始めましょう。

子供の未来のための準備です。

相談先の一例

•市区町村 障害福祉課

•相談支援専門員

•社会福祉協議会

•信頼できる専門家(司法書士・社会福祉士など)

以上

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